2007/10/06

カヌーと車イス

 川をカヌーで下るという楽しみを知ったのは、もうずいぶん前のことだ。わが心の師匠は、ご存知「野田知佑」師であります。野田師は、今では数少ない美しい川を目指し目的地まで鉄道を使い、川の上流から、折りたたみ式カヌーを組み立て、川下りのキャンプ旅をする、というスタイルを世間に広めたことでも知られている。「生」野田に初めて遭遇したのは、もう20年近く前の相模川での「キャンプ・イン・シンポジウム」という河口堰建設反対イベントの会場。なぜかワタクシはこの時に「段ボールカヌー・日本初」ツーリングのサポートスタッフの1人として参加していまして・・・。
師は段ボール」を見て「いいねえ、こういうの。こうやってたくさんのヒトがカヌーを楽しめばいいんだ。川への関心が高まれば建設省も勝手なことが出来なくなる」と言っていたっけ。
野田師とは、その後長良川河口堰の建設反対のカヌーデモ&キャンプイベントの時に再会。この時は日本中のツーリングカヌー愛好家が集合した、と言われるほど大勢の参加者で、会場となった河川敷のキャンプ地は所狭しとテントが並び、当時のアウトドア用品の見本市の様相を呈していた。参加したキャンパーの車で堤防上の道路は大渋滞になり、交通整理と誘導のボランティアがてんてこ舞いをしていたのでした。そんな渋滞の中である小さな事件が起きたのだ。誘導のボランティア青年と地元の通行車の間でトラブルが発生。どうやら渋滞にイラついた車が誘導の制止を無視、片側交互通行の堤防上で双方睨み合い、怒号が飛び出した、というわけ。たまたま僕らのグループのテント脇で再会を祝してビールを飲んで談笑していた野田師、つと立ち上がり堤防へ。興奮し喧嘩腰の運転手の車に歩み寄り、開け放ったサイドウインドの枠に両手をついて「ご迷惑をかけてすいません」誘導していた青年を指し「彼も懸命に交通整理をしていてエキサイトしたのだ。申し訳なかった。今すぐ通れるようにするので少しだけ待ってください」とへりくだるでもなく、威張るでもない絶妙な「間」でその場を収めたのだ。
その場に居あわせたワタクシは・・・格好いい!なんて格好いいのだろう。これこそ熊本の男バイ。と、さらに感じ入った、という次第。
それから幾星霜。野田師が障がい者カヌーとの出会いを雑誌に連載のエッセイで紹介した。車イス使用者がカヌーを楽しんでいるのである。地上では何かと不自由だがカヌーなら自由に川で遊べるではないか、というわけだ。
師はポジティブにカヌーを楽しむ障がい者に新しい時代を感じたのかもしれない。
その後、多数のサポートスタッフとともにユーコン川にまで遠征した。野田師の凄いところはその後である。その後も途切れることなく彼らと交流し、(たぶん)さりげなく手を貸しているのだと思うのだ。そんな野田師が今年の夏、再びユーコンの川旅を楽しむ様子がテレビで紹介されていた。師は言うのだ。「障がい者がもっと普通にカヌーを楽しめるようになればいい、普通になればいいよね」と。カヌーの旅は楽な旅ではないはず。でもカヌーならではの楽しみがあるはずだ。そのキツさ。楽しさを障がい者も、そうでないヒトも一緒に楽しもう、と言っている。いや、口に出して言葉で言わなくても行動がそう言わしめている。うーん。マンダム。格好いいぜ。
そうか!ウチにもあるよ。段ボールカヌーと折りたたみカヌーが。「折りたたみ」のほうは正式にはファルトボートというのだが・・・。
鮎釣りが終わる10月半ば過ぎに小さな「冒険」してみようかなあ、次男連れて。