2012/10/24

「食べることに困っている子ども」への理解とその環境づくり講演会報告



 10月20日(土)、東京学芸大学カフェテリア「第1むさしのホール」にて黄金ネットワーク主催の「食べることに困っている子どもへの理解とその環境づくり」講演会が開催されました。講師となっていただいたのは、当事者で保護者さんの富塚恭子さん、ICU看護師山際明子さん、社会医学技術学院の作業療法士の兵頭先生、ピノキオ幼児園の保育士の花岡先生、小金井特別支援学校の任養護教諭である小林真澄先生、養護教諭の松本志桜里先生、教諭の鈴木笑実先生、栄養士の河合裕子先生、総勢8名の豪華キャストで、大変内容の濃い講演会となりました。会場は、予定人数50名を超えて約75名の来場者で埋められ、熱心に聴かれていることもあってか講師の先生方の緊張感が高まり、熱弁振るわれて持ち時間をオーバーする場面もありました。
 来場者の多くが他市の特別支援学校の先生や専門職の方であったり、春秋に富む学生さんも多く参加されて熱心にノートをとられている姿もありました。行政からも発達支援に関わる子ども家庭・福祉保健・学校教育の3部の部長さんが参加してくださり、立場や職種を越えて関心を集めているのだなと感じます。
 講演会のトップバッターである富塚恭子さんは、大学病院で管理栄養士をされていたご経験もあり、現在3歳の重度アレルギーのお子さんに、そのご経験を通じて対処されています。培ってきた栄養士のノウハウと、身近な親としての生の声をお話しいただきました。
 続いて医療の分野からICU看護師の山際明子さんに、アレルギーの機序や対処法について簡単に説明して頂きましたが、まずは知ることで助けられる命もあるという事を伝えていただきました。命は人の手や理解によって救われるんだなという事や、病院ではない日常生活の中で命の薬を子どもが持つという重大さが会場の方々に伝わったかと思います。

  療育の現場から社会医学技術学院 作業療法士をされています兵頭洋子先生にお話をしていただきました。先生は学院で教壇に立ちつつ、病院の臨床現場でも様々なお子さんたちに療育をされておられていて、実際の現場で様々なケースへの療育の実践方法などが紹介されていました。姿勢や食事マナーを身に着けていく事、またそれらを食事の時間だけではなく、遊びの時間の中で同じシチュエーションを作り、食事への関心を高めていく事など、家庭内療育への沢山のヒントがあったと思います。
 小金井市のピノキオ幼児園の保育士である花岡先生からは、言語聴覚士や臨床心理士や栄養士の先生方との連携が、日々お子さんたちとの摂食指導に重要であるとお話しいただきました。パンやご飯などといった食材を、臨機応変に再調理することの大切さ、食事の環境を整えるために楽しく一緒に食べる事を心掛けているとの事でした。保育士の目線で摂食指導の現場のお話はあまり聞く機会がありませんでしたが、先生たちの努力と強い思いが伝わってきました。
 そして最後、小金井特別支援学校の先生方による講演でしたが、坂口校長先生も急きょフォローに加わっていただき、校長先生のご指導の下、講演会への気合いが伝わってきました。先生方が日頃指導されている環境とは違って、講演会でお話をすることに不慣れであるという事でしたが、内容はとても専門的で分りやすく、沢山の専門職が一人一人の二―ズに合わせてアプローチしている事が伝わってきました。食べ過ぎによる肥満など「食にまつわる生活習慣病」の問題などがますますクローズアップしてきましたが、この事は、障がい児にとっても無関係なことではなく、食べる機能がうまくいかない為に苦痛になっていたり、食のバランスを崩していることもよく分ります。バンビ教室というプログラムで栄養面と体重コントロールをされている努力が伺え、恵まれた環境の中でお子さんたちが沢山の専門職の先生方に支えられて健康維持をしている事を知る事も出来ました。
  今回の講演会で、小児の摂食障がいが理解され、子どもたちから「食」の楽しみを奪うことなく、「食べることに困ってる子ども」たちの為に様々な現場での取り組みを、職種や立場を越えて伝えることが出来たかと思いました。また、坂口校長先生のアドバイスによって医療・福祉・教育という夢のコラボを実現することが出来、今後の小金井市に大きく貢献できた講演会であった思います。
 遠方から多数ご来場いただた皆さま。学芸大学広報連携課をはじめとする大学関係者の皆さま。ご協力とご支援いただいたすべての皆様に御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。