2014/08/27

神尾陽子先生から、9月28日講演会に向けたメッセージ


「就学前後の発達障害の最新知見:早期の診断・支援の意義と地域連携の重要性」国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部 神尾陽子


 2002年、2012年に文部科学省が実施した全国調査によれば、通常学級の6%強の子どもたちになんらかの発達障害リスクが示唆されている。自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)そして学習障害など、いわゆる発達障害の子どもたちの脳は、母親の胎内にある時から通常とは異なる道筋を辿って発達すると考えられている。彼らの物の見方、感じ方、考え方、そしてふるまいが平均的でなく、時にユニーク、時に社会生活上、問題となるのはそのことが背景にある。さらに、発達の偏りがあることによって、配慮の欠けた環境での生活、あるいはストレスの多い社会生活においては様々な困難が慢性化しやすく、その結果、うつ病や不安障害など、精神健康も害しやすく、ひきこもりにつながるケースも少なくない。発達障害の症状自体は軽症で、児童期に目立たないケースでも、成人後、職場での対人トラブル、結婚生活の破綻、さらにはうつ病、不安障害、アルコール・薬物問題あるいはひきこもりなどによって、社会生活に深刻な問題を示すこともある。発達障害については、近年の研究結果から従来よりも早い乳幼児期に発見が可能になっており、早期からの支援の有用性が示されてきた。そして早期から発達支援をすることは、発達の促進だけでなく、児童期から成人期までの精神健康やQOLの向上につながることもわかってきた。発達障害の早期発見と早期からの支援は、人生の長きにわたる精神健康の観点からきわめて重要であり、地域社会で取り組むべき課題ということが言える。そして発達障害のある子どもの心身の発達を途切れなく見守り、精神的に危機に直面したときには、早期に介入できるような地域ネットワークづくりの大切さを強調したい。